吾唯知足

好きなときに好きなことをかく

VOICARIONⅢ 博多座声歌舞伎〜信長の犬~

VOICARIONは3回目とのことですが、初めて観劇させて頂きました~。

そしてひと言、大人様向け朗読劇、とてもイイ!!

 

若い子でももちろん楽しめると思うんだけれど、歴史背景や和楽器や能というものの基礎知識があったほうがより楽しめる朗読劇だと思った。*1

基礎知識プラス、話の時系列がバラバラで、しかも現在と過去だけじゃなく過去の中でも信長天下時代、光秀謀反時代、北条家の太田家侵略画策時代、没後の秀吉天下時代と飛びまくるから、頭の切り替えがパッパッと出来ないとついていけないと思うのね。だから、いろんな意味で頭を使いまくる大人様向け朗読劇だなーと思った。

 

全体感としては、ルキフェルが本能寺から東へ駆けていくとこ、秀吉が光秀の首取りにいくとこ、ルキフェルが資正を呼びに岩付城に走るところが、これ4DXで観てたら顔面に突風吹いてるわってくらい風を感じたなー。全体的に雨風雷の気配を感じる朗読劇だった。きっとそれは巧みな音と演出の賜物なんだろうな。

炎の演出も大盤振る舞いでね! 本能寺が燃え落ちる場面なんて、博多座大炎上! やっぱり本物の火を使うと迫力が違うわ。

音楽はやっぱり和楽器が効いてた。高い鼓の音色が要所要所で締めてくるのがイイ。和楽器隊おねえさんたちの和アレンジ衣装もよかった。おねえさんたちの衣装に比べると、男性陣の衣装にもう少し統一感あったら良かったのになーと思ったんだけど、あれも計算のうちなのかな?

 

で、衣装と言えば観る前から前情報でこだわりの衣装について期待してたんだけども、蓋を開けてみたら秀吉一人勝ちじゃね?っていうw 他の演者との差が激しすぎて、まさにボス猿様だったwお山の大将だったw

秀吉の両脇固める石田さんと浪川さんの太田家両人が地味~な配色だから、より一層金ピカが際立って大変なことになってた。あとは井上さんの衣装も良かったなー。老いた瑠璃丸のくすんだ茶色を現した感じの衣装が、瑠璃丸役のときに引き立つのよ。老いた犬を容易に想像できてしまうのよ。ウッ、瑠璃丸…(思い出し泣き)

 

いやほんと、ストーリーとしては歴史云々よりも犬を愛する人種にはたまらない、主君と愛犬の揺るがない主従愛をとくと見せてもらったなと。

信長とルキフェルの共に未来を見ようと約束した関係も、資正と瑠璃丸の長い時間ずっと寄り添ってきた関係も、多門と瑠璃丸の心ではちゃんと繋がっていた関係も、どれも犬を愛する人間にとってはグッとくるしかないストーリーで、特にシロに最期を見せず資正を想って逝った瑠璃丸のくだりではボロッボロ涙が出て止まらなかった。

しかし、それぞれの武将と犬の関係の中でどうもしっくりこないのが資正とシロの関係なんですよ。最期の最期まで信長を追い求めたシロもといルキフェル。でも、人間の年齢でいうと100歳まで生きたということは信長よりも資正の下にいた時間のほうが長かったはず。もっと言えば、信長と出会った時点で仔馬ほどのサイズがあったということはいくらボルゾイでも仔犬ではなかったわけで、とすると難破船乗船時にも飼い主がいたはずで、少なくとも3人の主がいたはずなのに何故ルキフェルは信長にだけ執着するのか、資正に心は開いたんだろうけども、彼に対してどういう感情を抱いてたのか、そこも知りたかったなー。まあ、本編じゃなくてスピンオフでいいけど。

それにしても瑠璃丸が17歳、大型犬のシロが人間で100歳ということは15歳程度。あの時代のわんこにしてはギネス級の長生きなんだけども、資正は何を食べさせていたのかが気になって仕方がなかったのは同じ犬飼いの性ですかねw

 

犬以外ではやはり秀吉の孤独の演出がすごかった。特に一幕終盤の光秀が秀吉の思惑通り謀反を起こしたと聞いたときの、光秀討伐のくだりが鬼気迫るものを感じた。秀吉の奮起と、ルキフェルの本能寺脱出が交互に繰り出されてたから、より勢いを感じられたのかもしれない。あの時の鈴村さんと諏訪部さんの勢いのある掛け合いが素晴らしかった。

そして全部自分が書いた筋書き通りに物事が動いているのに、悲しげな秀吉の孤独が心に刺さった。鈴村さんさすがっす。

太田家の二人も好きだったなぁ。ひょうひょうとした犬大名資正と切れ者の多門の乳兄弟コンビが世が世ならうっかりBLで描かれてるであろう関係性でちょっぴり腐った心をくすぐった← 浪川さんのキャラクターがけっこう本人そのままの喋り方だったから、秀吉に対して舐めた口調で喋るのがよりおもしろかったな。資正と瑠璃丸がじゃれてるシーンは大いにニヤニヤさせて頂きましたわ。

あと、やっぱり朴璐美さんの信長は革新的! 挨拶でも言われてたけど、これだけイケボ声優が集まってる中で女性が信長を演るっていうのは相当なプレッシャーだったのは想像に易い。でも本当に格好良かった!! 特にポイントが高かったのは、暗転中も信長は足組んで座ってるトコ。暗闇の中でもシルエットから高貴さが伝わってきてたまらなかった。朴さんにしろ斎賀みつきさんにしろ、男役やる女性声優さんはたまらん! やっぱり私は一刻も早くGoes!をプレイするべきである。

 

朗読劇って声優としてかなりの力がないと演じられないものだとは思うんだけども、こういった朗読劇はぜひもっと増えてほしいな。小劇団が小劇場でお芝居をするように、若手声優が小さなホールで朗読劇をやる機会がもっと増えたら良いな。アニメやゲームに寄らず、こういった場で声優の芝居というものをもっと観てみたい、聞いてみたいと思った朗読劇でした。

*1:能については私もほとんど知識がないので勉強しないとな…と思いましたが